「性行為で感染する病気」を総称して、性感染症(STD)といいます。ウイルス、最近、原虫などが 性器、泌尿器、肛門、口腔などに接触することで感染します。 しかし、症状が軽かったり、なかったりすることもあり知らぬ間に進行していることがあります。 ※STDとはSexuallyTransmittedDiseasesの略です。
エイズの原因であるHIV(ヒト免疫不全ウイルス)は、本来感染力の強いウイルスではありませんが、 性器クラミジア感染症などの他の性感染症に感染しており、局部に炎症がある場合には2~5倍 潰瘍がある場合は男性で10~50倍、女性で50~300倍もHIVに感染しやすくなると報告されています。
性感染症は、感染した人の精液や膣分泌液の他、性器、泌尿器周囲の病原体や分泌液に直接触れることによって感染します。
現在、性行為は多様化しており、ひとくちに「セックス」といっても色々です。当サイトでいう「性行為」は下記のような広い意味での性行為も含みます。
「膣性交」
「口腔性交」(オーラルセックス・フェラチオ・クンニリングス)
「肛門性交」(アナルセックス)
性感染症に感染しても自覚症状が無い事があります。でも、からだの中で病気は進行します。
性感染症は不妊症の原因になります。
⇒性感染症を放っておくと炎症を起こし、男女とも不妊症の原因になる場合があります。
「もしかしたら…」と思ったら、恥ずかしがらずに医療機関を受診することが一番大切です。性感染症は、治療が遅れるほど治りにくくなります。
★性感染症は検査で分かります。
病気の種類によって、検査の時期や方法が異なります。
自己判断や思い込みで悩まずに医療機関を受診しましょう。
早期発見・早期治療が大切です。 治療は、パートナーと一緒に受けましょう。
★性感染症は治療できます。
ほとんどの性感染症は早目にきちんと治療すれば治ります。 医師の指示に従って、確実に治療しましょう。
早目に治療すれば治りやすく、不妊などの後遺症を残すことも少なくなります。 症状が軽くても、放っておかないできちんと治療しましょう。
性感染症を担当する科は病院によって名称は異なりますが、主に産婦人科・泌尿器科・皮膚科・性病科などになります。
感染症の治療で大切なことは、医師から「治った」と言われるまで、きちんと治療を続けることです。そしてあなたのパートナーも一緒に受診することです。

性器クラミジア感染症

日本でも世界でも最も多い性感染症です。自覚症状がほとんどないので感染に気付かないことが良くあります。しかし、進行すると不妊症や母子感染など様々な病気の原因となるのできちんと治療する必要があります。

<症状>
男性:症状は軽く尿道がむずがゆくなったり、排尿の時に軽い痛みがある程度です。尿道分泌物による下着の汚れで気付くこともあります。放置すれば精巣上体炎、男性不妊症を起こします。

淋菌感染症

細菌性の性感染症で、クラミジアと同時に感染することがあります。男性にはすぐにはっきりした症状が出ますが、女性は症状に気づきにくく進行して初めて分かることが良くあります。

<症状>
男性:尿道のかゆみや熱っぽさから始まり、粘液や黄色の膿が出ます。非尿時の痛みがひどくなりペニス全体が腫れ上がるほどの激しい症状がでることもあります。

梅毒

梅毒は慢性の感染症で、何年もかけて進行していきます。粘膜や皮膚の小さな傷から感染しますが、食器などから感染することはありません。

<症状>
病気の時期によって症状が違います。時に無症状のこともあります。

  • 第1期(感染後3週~3ヵ月まで)  感染した場所(性器・肛門・口など)にできもの、潰瘍ができます。第1期の症状は放 置していても約1ヵ月で消失します。
  • 第2期(3ヵ月~3年まで)  全身にブツブツや発疹ができます。発疹は半年以内に消失します。
  • 第3期(それ以降)  一見体調の良い時期が数年続きますが、皮膚や内臓で病気は静かに進んでいます。
  • 第4期  神経症状や心血管症状が現れることがあります。

性器ヘルペスウイルス感染症

一度感染すると、ウイルスが体の中に潜伏して何度も再発する病気です。

<症状>
感染しても全く症状のないことがありますが、症状のある場合は性器に小さい水ぶくれ(水泡)や潰瘍ができます。激痛の為排尿困難や歩行困難を生じることがあります。やがて乾いて治ってきますが、ウイルスは体に残り疲労や月経、性行為などで再発することがあります。

尖圭コンジローマ

外陰部に小さな尖ったイボができる病気です。イボが出来ない事もあり、痛みやかゆみなどの自覚症状もほとんどないので、感染に気付かないことがあります。

<症状>
イボは外陰部から肛門や膣内にもできて、集まると小さなカリフラワー状になります。 普通は自覚症状はありませんが、時々かゆみやセックスの時に痛みを感じることもあります。ウイルスに感染してもイボが出来ない事もあります。

トリコモナス尿道炎

一般に女性に強い症状が出る病気です。男性にはほとんど症状が出ませんが、治療をしないと他人に感染させる危険があります。

<症状>
症状が無い事が多く、あっても排尿時の痛みや頻尿ぐらいです。前立腺炎を起こすこともあります。妊娠中に感染すると早産になることがあります。

カンジダ性亀頭包皮炎

カンジダは真菌の一種です。性行為で感染しますが、身体に常在するものなので、性器からカンジダが検出されたからといって性器カンジダ症を発症しているとはいえません。また、感染したからといってすぐ発症するわけではなく抵抗力が低下した時などに発症します。

<症状>
無症状、またはかゆみがあります。

ウイルス性肝炎・肝炎ウイルス ※当院では検査のみとなります

肝臓は、出血を止める血液成分を作ったり、体内に入ってきた薬物や毒物を解毒したり、糖・タンパク質・脂肪・ビタミンの生成、貯蔵など多くの機能を持っている臓器です。肝炎ウイルスに感染して肝細胞が壊されていく状態を肝炎といい、炎症の進み方により、劇症肝炎・急性肝炎・慢性肝炎に分かれます。肝炎の種類にはA型・B型・C型・D型・E型があり、ここでは性行為で感染するA型・B型・C型のうち、慢性肝炎となって肝硬変や肝がんを起こすこともあるB型肝炎についての説明です。

<症状>
急性B型肝炎では、全身倦怠感・食欲不振・吐き気・嘔吐などの症状に加え、黄疸が出現することがあります。はっきりした症状が出ない場合もあります。症状が出なくても慢性肝炎になっている場合もあります

HIV感染症・エイズ(後天性免疫不全症候群)※当院では検査のみとなります

ヒト免疫不全ウイルス(HIV)により起こる病気です。病気が進行すると次第に抵抗力が弱まり、健康な時なら心配のないウイルス・細菌・カビなどの病原体によって、色々な病気が引き起こされます。

<症状>
はじめはほとんど無症状で経過しますが、抵抗力が落ちてくると発熱・下痢・倦怠感・体重減少などいろいろな症状がでます。病気が進行するとニューモシスチス肺炎(カリニ肺炎)HIV症状、カポジ肉腫などの合併症も現れます。

毛じらみ症

ケジラミという寄生虫によって起こる病気で、主に性行為で感染しますが、親子間の接触や、シーツやタオルなどを介して感染することもあります。

<症状>
外陰部のかゆみですが、ほとんどかゆみがない場合もあります。

Q.性感染症はセックス以外で感染しますか?

A.病気によっては、膣性交以外の親密な接触や濃厚な接触でも感染することがあります。「セックス」と聞くと膣性交をイメージするかもしれませんが性感染症は、フェラチオやクンニリングスといったオーラルセックス(口腔性交)や、アナルセックス(肛門性交)でも感染することがあります。 ★握手・せきやくしゃみ・トイレ・食器の共用では感染しません

Q.性感染症は1回のセックスでも感染しますか?

A.1回のセックスでも感染することがあります。病気によって感染力が異なりますが、誰でも感染する可能性があります。

Q.なぜ、コンドームが重要なのですか?

A.コンドームだけで、性感染症の全てを予防することは出来ませんが、感染の危険をかなり低下させることができます。これは、病原体を含んだ精液、膣分泌液が、粘膜に侵入することを防ぐからです。

Q.ピルは性感染症の予防に有効ですか?

A.ピルは避妊の為のものなので、性感染症の予防にはなりません。性感染症を予防するためには、コンドームを使用することが有効です。

Q.性感染症の検査では、プライバシーは守られますか?

A.医療機関では、プライバシーを守りながら病気の経過や症状を聞き、診察や検査を行います。心配があれば、医師に不安であることを話し、納得した上で診察を受けてください。保健所でも、HIV検査と同時に性器クラミジア感染症などの一次検査を行ってます。検査方法は、血液検査や尿検査です。ただし確定診断ではないので感染に疑いがある場合は、さらに一般の医療機関で検査することが必要です。

Q.自分だけが治療すれば良いのですか?

A.パートナーと一緒に治療してください。性感染症は、性行為で感染します。このため自分だけが治療してもパートナーが感染していれば再感染が起こります。

Q.一度治療すれば、その後は感染しませんか?

A.ほとんどの性感染症は、何度でも感染する恐れがあります。治療後も、性感染症の予防に気を付けなければいけません。

Q.自覚症状の無い人からも感染することはありますか?

A.自覚症状のはっきりしない性感染症もあります。パートナーも自分も症状がないからといって安心はできません。